あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
中に入るとまず目に入ったのはステンドグラスだ。
全体的に薄暗いけどステンドグラスの輝きは幻想的で、見入ってしまう。
「当初、この教会は建設予定ではなかったんだ。だが、あの映画のヒットとこの島が映画の聖地みたいになっているだろ? それで急遽建設が決まったんだ。まあ、ヒットに便乗した形になるけどね」
「そうなんですか。でも素敵です。映画にでてくる教会にも似てますね」
「全く似せちゃうのは色々と問題があるからね。すでに問い合わせもあるみたい」
「教会の?」
「というか結婚式の問い合わせだよ」
アニメ映画では、蛍の森で思いが通じ合った二人は、その足で教会へむかい、プロポーズをする。
だが、彼らには超えられない大きな壁があって、ヒロインはプロポーズの返事ができずにいた。
だがヒーローは、どんなに時間がかかろうが絶対にここで愛するヒロインと結婚式をするため、
神の前で誓いをするというシーンだ。
それはまさしく、今のような夜の教会だった。
だけどなぜ私をここへ?
「なんでここって思ってる?」
「え?」
「顔にかいてあるよ」
悠一さんはクスッと笑うと長椅子に座った。
そして話を続けた。
「あの映画で、二人はこの教会で『俺にとって君はたった一人の人。それ以外の答えが見つからない』って言った台詞を覚えてる?」
私は頷いた。
「俺もこの映画は仕事の資料の一つとしてみてた。その時はこの台詞を言った男の気持ちなんて全くわからなかった。自分にそういう相手なんて現れないと思っていたから……。だけど君に出会って初めてその気持ちが分かった」
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