あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
ちょっと待ってよ。
なんでこんなこと言うの?
「結婚する人が何をいってるんですか?」
「わかってる。だけど君への想いに嘘はつけない。俺にとって君はたった一人のひとだから」
彼の熱い眼差しに、胸が張り裂けそうになる。
「……ずるい」
私は黙っていた思いを口に出していた。一度口に出すと止まらなくなった。
「なんでそんなこというの? あなたへの気持ちを封印しようと努力しているのに、なんでそんなことを……」
悠一さんは立ち上がると私の顔を覗き込むように見つめた。
「仕方ないだろ、好きな女が目の前にいるのに、手が届きそうで全く届かない」
「だってそれは」
私たちには越えられない壁がある。
全く皮肉にもあの映画のまんまじゃない。
「分かってる。全部俺が悪いんだ。だけど……俺は君を諦めたくないんだ。実は相手の女性には恋人がいる。だから君のことをちゃんと話してこの結婚を無効にする。だから」
「無理よ」
たとえ無効になったとしても、私たちは一緒にはなれない。
そういう運命。
「翼?」
「私はあなたと出会ったことは後悔してません。むしろ感謝してます。ですが、私とあなたでは住む世界が違いすぎます。だからこれ以上私を惑わせないで」
彼は座ったままの状態で私の腕を掴み自分の方に引き寄せた。
その途端私はバランスを崩し、倒れそうになった。
すると彼は私の腰に手をまわした。
「あっ!」
驚きの声とともに彼は長椅子に寝そべり、押し倒したように、私は彼を上から見下ろしていた。
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