あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
あわてて離れようとするが、逃さないとばかりに彼に引き寄せられた。
「ゆ、悠一さん?」
「俺は君を惑わせたい。惑わせて俺のことでいっぱいになってくれればいいんだ」
「そ、そんな」
もうすでにあなたのことでいっぱいよ。
それが良くないからこうやって自分に言い聞かせるように言っているのに……。
「俺は、君に惑わされてるよ……あの日、君と別れてからずっと……女々しいと思われても仕方ない。だけど君への気持ちをもう抑えられないんだ。家政婦なんてさせるつもりなんてなかった」
「やめて!」
「翼?」
「諦めようとしているのに……。こんなこと言われたら私」
どうしよう。こんなこと言われて抱きしめられたら諦められなくなる。
もっともっと好きになる。
「こんなこといわれたら……なに?」
だめここで本心さらけ出したら、歯止めが効かなくなる。
相手には婚約者がいるのよ。愛情がないとか言ってても、婚約者ってだけ勝者なの。
太刀打ちできない。
「なんでもない」
「なんでもないってことないよね。言って」
「いや」
もう、なんでこんなことになってるのよ。
「それともずっと俺に抱きしめられたいとか?」
「そ、そんなんじゃ」
「じゃあいって」
もしかしてしつこい?
でもこれじゃあ埒が開かない。
「わ、私もう帰らなくちゃ」
体を起こそうとする。だが、男の人の力は強く私はビクともしない。
「君も強情だな。でもそういうところも可愛いけどね」
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