あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「ちょっと聞きたいことがあるんだが……君は、俺との結婚を望んでいるのか?」
するとまたもやケラケラと甲高い笑い声が聞こえた。
『もう、なんて質問してるのよ。望んでるとかそういう次元の話じゃないことは悠一さんだって分かってるでしょ。そりゃ〜最初は親のいいなりになって結婚だなんて嫌だったわよ。でもね今は違う』
「違うとはどういう——」
『もう割り切っちゃったのよ。それに私は早く子供が欲しいの。悠一さんに似た子供をね」
この状況でどうやって白紙に持っていったらいいんだ?
いや、変な小細工はいらない。
堂々と本音をぶつけてこの結婚は白紙にするのが一番だ。
まずは直接会って……。
「わかった。明日の便なら十五時には港につくだろうから迎えに行くよ」
『そう? 助かるわ。じゃあよろしね』
言いたいことだけ言った由理恵は先に電話を切った。
それにしてもなんで明日なんだ?
俺はスマホを乱暴に助手席に置くと手で顔を覆い、大きなため息を吐く。
「は〜……。何やってんだよ。俺は」
好きな女一人幸せにできず、親の言いなりなって好きでもない女と結婚。
だが俺は諦めたわけではない。
翼と再会したんだから。
由理恵に俺の気持ち話して、この婚約を無効にする。
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