あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
翌日、俺は翼に、用事があるから食事は要らないとメールを入れた。
彼女から返ってきた言葉は
【わかりました】
と短いものだった。
本当は昨日のこともあるからちゃんと会って、俺の思いを聞いて欲しかった。
だが、東京から由理恵が来る。
いまここで二人を会わせたくない。

翌日、昼休憩を終え、現場ミーティングを少し早めに切り上げると、一度中抜けすると伝え、俺は港へ向かった。
港近くの駐車場に車を止め、あまり目立たぬ様出迎えにきている人たちから少し離れた場所で立ってた。
それは俺の小さな抵抗だった。
はっきり言って由理恵がこの島に来ることを俺は歓迎していない。
そして、由理恵と一緒にいるところをなるべく人に見せたくないという思いからだった。
だが、俺の思いとは違い、由理恵の登場は目立っていた。
派手な服装で、俺を見つけると大きな声で
「悠一さ〜ん」
と手を振る由理恵。
船がまだ動いているというのに……。
そのおかげで、視線が一気に向けられて、返って目立ってしまう結果となった。
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