あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「あら、朝倉くん。あの派手な美女はだれよ」
港の近くに住むおばあちゃんに声をかけられた。
「こんにちは。彼女は……ただの知り合いです」
口が裂けても婚約者などと言いたくない。
だが由理恵は嫌味なほどあからさまな行動をとった。
船から降りると俺に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと……いきなりなんだ」
「なんだって……そんな言い方ないんじゃないの?未来の旦那様」
俺に聞こえるような声だったからよかったものの、こんなこと誰にも知られたくない。
だが、彼女の大胆な行動は悪目立ちし、またもや視線が集中する。
「とにかく車に乗ってくれ」
「はいはい。つまらないわね〜久しぶりの再会だっていうのに〜」
「別に来てくれとは頼んでない」
由理恵は下唇を噛みながら俺をじろっと睨んだ。
駐車場に着くと、由理恵は露骨に顔を歪ませた。
「車ってこれ?」
「生憎社用車しかないもので、嫌なら歩いてくれていい」
「わかったわよ」
由理恵は不満顔で車に乗った。
誰が見ているかわからない。特に翼には知られたくない。
急いでエンジンをかけると別荘へ向かった。
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