あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「ところで、なんでわざわざここに来たんだ? 電話でもよかっただろうに」
「……そんなに私が来るのを嫌がるなんて……なにかあるのかしら? たとえば〜この島に恋人がいる——」
「いない。ここへは仕事に来てるんだ」
由理恵は俺の心を読み取るかのように黙って俺の顔を見た。
ここで、いるなんて言ったらすぐに会わせろっていうに決まってる。
「そうなの。じゃあそういうことにしておくわね」
「だからいないって——」
「はいはい。ところで、別荘はまだ? 私疲れちゃった」
「もう着く。すぐそこ」

別荘に着くと、由理恵は部屋の中をくまなくチェックした。
そして冷蔵庫の中までチェック。
「あら〜一人暮らしで、ご飯はコンビニかと思ったけど……自炊なんだ」
まずい。ここはスルーが一番。
するとまたまた「すご〜い」と褒めてるのか貶しているのかよくわからない声が聞こえる。
「ねえねえ、野菜とかわざざわ冷凍保存とかしちゃうタイプなのね」
それは翼がしてくれたこと。
だけど本当のことは言えない。
「島に住んでる人が、持ってきてくれるんだ」
間違ってはいない。
「ふ〜ん。仲良くやってるのね〜」
「それより、何故わざわざここにきたんだ」
「そんな言い方ないじゃない……もちろん結婚式の相談に……来たのよ」
ん? なんだこの違和感。
「なにかあったのか?」
すると彼女の表情が変わった。
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