あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
顔が引きつっているというか、明らかに何かがあったとしか思えない。
そもそもなぜ急に結婚を急かすのか。
だが由理恵は視線を逸らしながら
「何も……ないわよ」
としたを向いた。
その態度のどこが何もないだよ。
大体由理恵には彼氏がいた。
結婚式のことだって最初は適当でいいとか言っていたのに……
「彼氏と何かあったのか?」
図星だったのか、由理恵は黙ってしまった。
だが俺としてはこれは由々しき問題だ。
彼女と結婚を白紙にするには彼氏がいることが前提だ。
お互いに好きなもの同士が結婚するのが一番だと説得したいのに。
どうする?
「彼とはもう別れるの」
予想通りというか……まだ別れてなかったことにホッとする。
だが話を聞くと、首の皮一枚でつながっているという感じだ。
「喧嘩したのか?」
由理恵は小さく頷いた。
だが急に顔を上げ、満面の笑みを浮かべる。
「もう彼のことはどうでもいい。そんなことより、私たちの結婚式よ。決めなきゃいけないことがたくさんあるの。招待客の人数はパパたちがほぼほぼ決めちゃうわね〜。ドレス、あとお料理や引き出物。この際だから派手にやらない。っていうかこの島にチャペルができるって聞いたんだけどそこで挙げるのもいいわね」
彼女は捲し立てるようにあれこれと話し出すが、俺は全くその気はないし、由理恵も全く楽しそうでなはい。
楽しいフリをしているだけだ。
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