あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「なあ」
声をかけるが、由理恵はタブレットを取り出して、ドレスはこんな感じがいいとか、会場は3つに絞ったとか話をやめる気配がない。
「ちょっと、俺の話をきいてくれ!」
語気を強めると、由理恵の口が止まった。
俺の気持ちを話すのは今しかないと思った。
「君に話したいことがある」
「なに?」
「悪いが俺は君と結婚できない」
由理恵の顔が一瞬で険しくなった。
本当はもっとちゃんと言葉を選んで決めなきゃいけないところだが、面と向かって話せるチャンスは今しかないと思った。
「なんでよ。まさか好きな女でもいるわけ?」
声のトーンがグッと低くなった。
「……ああ」
「そう、じゃあ結婚式までにはその彼女と手を切って頂戴」
「ちょっと待てよ。俺の話聞いていただろ? 頼む。結婚を白紙に——」
「そんなこと……できるならもうしていたわよ」
「え?」
「それができないからこうやってあなたのところに来たんじゃない。私だって好きでここに来ているんじゃない」
由理恵は目に涙をいっぱい溜め訴えた。
「待ってくれ。 詳しく聞かせてくれないか?」
由理恵には四年付き合った恋人がいた。
見た目は派手だが、意外にも一途なところがあったようだ。
恋人は、一般家庭の次男だという。
しかも公務員。
写真を見せてもらったが、真面目で誠実そうな男性だった。
というかよくこんなお嬢様相手に四年も付き合ったとおもう。
だが努力しているのは彼氏だけではなく由理恵も努力をしているようだった。
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