あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
彼から今日は来なくていいというメールをもらって、複雑な思いでメールを見ていた。
「どうかしたのかい?」
祖母が隣に座った。
「なんでもないよ」
笑顔を見せたつもりだったけど、祖母には通用しなかった。
「昨日、ずいぶん帰りが遅かったけど……朝倉くんとなんかあった?」
「え? なんで朝倉さんなの?」
どうしよう。
本当のことを話すべきか、それとも黙っておくべきか。
っていうかばあちゃんが鋭いのか、私が顔に出過ぎだったのか?
「話したくなきゃ無理に話さなくてもいいよ。ただね、何事も自分の気持ちに正直になることも大事だからね」
祖母は時々、すごい心に刺さる言葉をさらっという時がある。
それは別に嫌なことではなく、むしろありがたいというか……。
心の境界線をちゃんとわかっているのだ。
その距離感が私は好きだ。
ちなみに母は違う。領域なんてどうでもいい。
知りたい、聞きたいを前面に押し出す。
だから私はある程度の距離をとっている。
話を戻すが、祖母の言葉に一瞬、全てを話してしまいたくなった。
だけど、今自分はどんな言葉を貰えば楽になるのかすらわからない。
「ところで、今日はその朝倉くんのところへはいかないのかい? 厚揚げの煮物を多めに作ったから持ってってもらおうかと思ったんだけど」
「ごめん、ばあちゃん。今日は来なくていいって連絡あったから」
「なるほどね。じゃあ、久しぶりにみんなでご飯食べるかい?」
「うん」
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