きみはわたしの地獄
逃げ込むように入ったコウの部屋。
思いっきり叩くと「夢じゃない…」とうわ言のようにつぶやくから、そういう意味で叩いたわけじゃないのにと泣きたくなった。
「なんで騙されてんのよ…」
「騙されたって……騙された、のか?」
のん気な台詞に深く息を吐く。
本当に、本当に存在していた。わたしと同じ顔の人間が。
「…身長以外でほかにわたしと違うところあった?」
「ない!…あ、声は今思えばちょっと低かったかも…風邪ひいてんのかと思って聞いたらちょっとだけそうだって言ってたから気になんなくなって…」
たしかに、そう思えてもおかしくないかも。
「ほかは?」
「ほか……腕組まれたときに当たったおっぱいがいつもより大きかった…?」
「シネ」
「ゴメンナサイ」
コウとわたしの付き合いは4年。高校3年の時に予備校で知り合って付き合うようになった。
だからそう簡単には見間違うことはないと思う。わたしの目から見ても…まるで鏡を見ているようだった。同じだった。
「問題は…ただ同じってだけじゃなくて、わたしのふりをしてきたってこと、で」
「オレ、本気で澄春だと思ってたよ。しゃべりかたも歩きかたも同じだった。顔だけじゃなくて、本当に、いろんなところが同じで。違うところ見つけるほうがむずかしい気がする…」
ドッペルゲンガー、どころじゃない。たしかに、意識を持って、わたしに成ろうとしていた、と思う。
「とりあえず周りのやつらには澄春との違い伝えておいて、見かけたらとっ捕まえておけって言っとく。あとなんだっけ…面接先の人と関わってたんだっけ。それ困るくね?」
「困るよ…もう散々な目にあったんだから…!」
どうにかしなきゃ。