きみはわたしの地獄
わたしが誕生日にプレゼントしたキーケースを見せてくる。不法侵入、窃盗。犯罪者じゃん。
「ちょうどお風呂借りようと思ってたの。そうだ、一緒に入る?」
その提案に呆然と、ただ首を横に振る。すると「残念」とちっとも残念そうじゃない言いかたでつぶやいて洗面所に消えていった。
家も知られていたなんて。
なんなの…本当に、なんなんだろう。
おそるおそる部屋に入ると、わたしが使っている香水と同じにおいが少し強く残っていた。
目に飛び込んできたわたしとおそろいのかばん。自分のものを投げるように置いて、その中身を漁る。
ポーチも、ポーチの中身の化粧直しの道具も、筆箱も、その中身も、使っている携帯とそのケースもハンカチも同じ。
それだけしか入れてないのに大き目のかばんを使っているところも同じ。携帯のパスワードは、さすがに違ったけれど。…でも財布の中にもどこにも身分を証明するものや名前が書いてあるものは見つからなかった。
「しろちゃん、かばんの中見てもわたしのことはひとつしかわからないと思うけど」
突然聞こえた声に肩が上がる。
その様子をくすくすと莫迦にしたように笑う。わたしがたまに心の中でしているそれをいざ目の当たりにすると、とんでもなく腹が立った。
入っていたものを同じ顔をした何かに向かってぶん投げる。
「気持ち悪いんだよ!」
「ひどいんですけど」
「誰なんだよおまえ!」
「しろちゃんです」
「……うざい。きもい。死ね!」
「いっしょに死んでくれるならいいけど」
なんでわたしが死ななくちゃいけないんだよ。しかもあんたと。変なこと言わないでほしい。
息が切れる。疲れた。恐怖で涙が止まらなくなって、だけど見せたくなくてうつぶせに寝転ぶ。