きみはわたしの地獄
「心当たりとかねーの?」
家に二度来たことは伏せながらあの得体の知れない人間の話をすると、コウは核心をつくかのような声で言った。コウはふわふわしているけど、馬鹿じゃない。
「どう考えてもやっぱ、澄春の知り合いなんじゃないかと思って」
ストーカーなことは間違いない。
だけど、たぶん、それだけじゃない。…しろちゃん、と呼ぶ、わたしの口調によく似た別の声が脳裏を這う。
「…小学生のころに知り合った人か、その関係者だと思う」
「なんでそう思ったの?」
「しろちゃんって呼び方、そのころにしかされたことない。しかも高学年に入る前に転校してて転校先ではふつうに名前で呼ばれてたから、小三まで通ってた学校の人だと思う」
しかもあいつは、それをまったく隠す気配がない。自分のことを自分から話すつもりはないみたいだけど、わたしから知るぶんにはいいっぽい。そんな感じの態度。だからといって質問するには勇気がいるよ。
「連絡とってる人いる?」
「さすがにいないなあ…」
「じゃあSNSで繋がろうぜ。どうせ澄春、小学校低学年のころも変わらず人気者だったんじゃねーの。そんならすぐ知り合い見つかるって。まずはなんか手掛かりほしい」
「あ…じゃあフェイスブックに学校名追加してみる」
「なんか進展あったら教えて。こっちは目撃情報とか調べてみるから」
「ありがとう、コウ」
「…さすがに、不気味だろ。彼女がこわい思いするとか、さすがにねーわ。オレももう騙されたくねーし」
それはまあ、騙されないでほしいけど。
だけど、ほんとうに、そっくりなの。近くで見ても遠くから見ても、容姿だけじゃなくて、身なりも口ぶりも、何もかも気持ち悪いくらいで。