きみはわたしの地獄
何をのんきに一緒にごはんを食べてるんだろう、と思ったけど、だけど、向いに座ったあいつは、まるで鏡のようで…。
せめて何者かがわかれば。
──── わかったら、どうするんだろう。
どうするべきなんだろう。
数日経ったけどSNSの反応はなく、仕方ないからお母さんに連絡先がわかる人はいないか聞いてみることにした。
「四年生から通ってたほうの学校なら今でも仲良くしてるママたちがいるけど、さすがになあ…」
それはわたしも同じで、転校先の学校の友達とは今でも遊んだりする。でも転校前の学校は地方だしなあ。
そうだよね、とあきらめて電話を切ろうとしたら「なんで一昨日聞いてこなかったの?」と問いかけられた。
「一昨日…?」
電話もメッセージもした覚えがない。
「家に来たでしょう。あ、あげたお野菜もう食べた?早く食べちゃわないとくさっちゃうからね」
爪先から、ぞわりと一気に冷えていくのを感じた。
わたしは一昨日は大学にゼミにそのあとは飲み会で、実家に行く暇はない。そんな感じで二か月は帰っていない。
「その時のわたし、何か、変じゃなかった……?」
「変って何よ。でも風邪は治ったみたいでよかったわ。声もすっかり元通りね」
「……っ」
──── あいつだ。
いくら離れて暮らしているからって、母も、父も、妹も弟も、誰も気づかないなんてこと、ある?
身体中が震えてる。
わたしになりたい、なんて、だからってどうかしてる。