きみはわたしの地獄
二十歳を過ぎれば人は自然と大人になっていくものだと幼いころは思っていた。
そう言いながらハイボールを流し込むと大学の友達たちは「感傷的なの、らしくないよ」とにたにた笑う。
確かにらしい発言ではなかったかもと、慌てて「ま、わたしはみんなより大人だけどね~」と付け加える。
なかなか思うようにいかない就活の合間の飲み会は喉すらまともに潤してくれない。
堅苦しいリクルートスーツのジャケットを脱いだってけっきょく着慣れないワイシャツで動きにくいし、せめて酔えたらいいんだけどお酒は強いほうだ。
好きなネイルもロクにできない。髪は、黒染めしていないけど。やってもやらなくても結果なんて変わらないだろうと思って。
男子たちは内定の数を競っているらしく向こうのテーブルで自慢という名の情報収集会をしている。陳腐な会話だな、と思いつつ、少し耳を傾けてしまうのは、いくら心の中で毒づいたってほかの人たちの進捗が気になるから。
もともとわたしはあまり数を受けていない。…なんて言い訳を前置きして、今もらっている内定は1つだけ。だけど明日大本命の会社の最終面接がある。
それに受かれば…と祈るような気持ちが半分。あとの半分は、大手だし最終まで進めただけでも大団円だよと自己辯護してる。こんなの情けなくて誰にも言えない。
就活をはじめるまでは、正直、もっと余裕だと思っていた。
就職難とは言われているけどそこそこ有名大学に進学して成績も上の中をキープ。課題もまじめに取り組んできたつもりだったし、なにより、今までスランプらしいスランプに陥ったこともなくなんでも適度にこなしてきた。懐に入るのが上手いとか可愛がりがあるとか、そういう評価しか受けたことがない。