きみはわたしの地獄


その日はお鍋を一緒につつくことなく、その個体を家から押し出して、白菜たちはゴミにした。


わたしのことを好きだと言った。キスをしてきた。

だからわたしに成りたい、ってこと?ぜんぜんわからないんだけど…もう理解しようとするのはやめよう。どうせわかりっこない。


他の誰かになりたいなんて考えたこともない。なる必要がなかった。

そんな気持ちを誰かに向けられることになるなんて思いもしなかった。



「しろちゃん久しぶり!連絡とれてうれしいよ~。FBで見つけたときはうれしくて他のみんなにも連絡しちゃった」


都内のカフェで人を待っていると、その人物はやってきた。

小学校三年生の時に同じクラスだった女の子。よく一緒に行動していて、メッセージが届いたときはすぐに顔が浮かんだ。


「本当に久しぶりだね。会えてうれしい」

「こっちのせりふだよ~。しろちゃんが引っ越しちゃった時はみんな泣いて見送ったの思い出すー」


まだSNSもそこまで普及していなくて、年齢も年齢だ。連絡手段もなく疎遠になってしまったけど、すごい楽しいクラスで、わたしも離れるのが淋しかったことを覚えてる。だから単純に再会できたことはうれしかった。

しばらく他のみんなの現状とか、わたしたちのこととかを話して盛り上がった。


だけど内心は気が気じゃなくて。


「そういえば卒業アルバムだったよね。持ってきたよ」

「ごめんね。実家から取り寄せてくれたんでしょ?」

「そんなのぜんぜんいいよー」


今は地元を出て東京に住んでいるらしく、彼女と会うことはたやすかった。頼んでいたアルバムも持ってきてくれてありがたい。

ひとクラスずつ、ひとりひとりの顔写真を順番になぞった。

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