きみはわたしの地獄


それなのに、気付かなくて、ごめんね。


「あの頃の昴くんを思い出したから、こわくなくなったんだよ。だから昴くんがわたしになる必要なんて、ないって、わたしは思う」

「…しろちゃんになったぼくはきらい?」

「きらいとか、好きとかじゃない。そういうことじゃなくて…っ」

「ぼくは、しろちゃんが好きだ。世界で一番好きだから、しろちゃんになりたい」


何を言っても届かない。

ちがうから、わからないし、わかってもらえない。


それが悲しくなって涙が頬に伝う。

同じように彼も泣きはじめた。わたしが泣いたからそうしてるの?昴くんの気持ちが、何も見えない。同じ容姿をしているだけで、あの頃の昴くんが消えちゃったみたいだ。


わたしに好かれたいから、わたしになりたい、なんて。



「……ねえコウ。わたしって自分のこと大好きマン…?」

「なに急に」

「いいから答えて」


避難するみたいに身を寄せたコウの家。


DVDを見ていたんだけどしばらくして距離が近くなって、くちびるを重ねて、何度かキスをしながらベッドに倒れ込んで……今。

これからはじまるであろう行為に相応しくない問いかけにコウはしかめっ面を浮かべた。素直だなあと思う。



「きらいとは思ってないんじゃね。自分のしてることに自信も責任も持ってんだろうなってわかるし、人にきらわれてないって自覚もある。でもそれひけらかしてる感じもないし、大好きマンって下げた言い方すんなよ」

「……わたし、コウの、そうやってわたしの良いところ見つけてくれてるところ、好きだなあ」


だからコウと付き合ってるのかな。

周りにはわたしのことを好いてくれてる人しかいない。


……ちょっと待って。どうして急に、そんなこと思うの。

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