きみはわたしの地獄
連日続く圧迫面接にお祈りメール。メールをくれるだけマシだと言い聞かせる。
大手を狙いすぎ?だけどどうせ働くなら良い環境で良いお給料で、やりがいを持てそうな業務内容で…って考えてしまう。
「大人といえば、澄春、昨日はずいぶん年上のサラリーマンと腕組んで歩いてたけどコウくんと別れちゃったの?」
「え……」
「渋谷のセンター街で見かけたよ~」
「……いや、別れてないよ。それわたしじゃない」
またか、と思った。
「澄春みたいな美人見間違えるわけないじゃん」
「話しかけなかったの?」
「あ、ごめんごめん、うちも今良い感じの男と一緒だったから」
飲み会、来なきゃよかったかも。わたしみたいな美人、とか、わたしらしくないとか、めんどくさい。
「あたしも澄春のこと六本木で見かけた!就活ヨユーだね」
「わたし、昨日は大学の自習室で一日引きこもってたし一昨日は内定先に行ってそのあとコウの家に寄ったから渋谷にも六本木にも行ってないよ」
みんな、見かけたなら話しかけるまでしろよって毎回思う。使えないなって。
わたしが行っていない場所や一緒にいなかった人と歩いていたという目撃情報を耳にするようになったのは三年前くらいから。
たまたま今日来てる人たちは初めてみたいだけど、大学のほかの友達、中学、高校の同級生、さらに家族からもしょっちゅう言われる。
初めは気味が悪かった。だってみんな「そっくりさん」「似てる人」じゃなくて「城木澄春を見た」って言うから。