きみはわたしの地獄
わかってる。気持ち悪い。気味も悪い。気色悪い。気分は最悪に悪い、のに、どうして今まで出会ったどんな人物よりずっと、なんでもゆるしてあげたくなるんだろう。
「ばんざいして、しろちゃん」
「や…やだ……」
「まあしてくれなくても、脱がせられるけど」
貧しい抵抗は本当に虚しく、空気に晒されていく素肌。
双眸がこちらに落ちる。
いくらか観察するような視線を向けたあと、同じかたちをしたくちびるは鎖骨に触れた。
「お風呂入ると鎖骨に水溜まるよね」
「……」
「しろちゃんはもうちょっとだけお肉がついたほうが魅力出ると思う。同じにしたからわかるよ」
それはつまり、こいつとわたしは、違うということの表れだ。わたしはたとえお肉がついたって自分から魅力が出たとは思えない。
夜のままつけていたナイトブラは外しづらいと思う。かと言って自分からは脱いだりしない。あきらめてくれたらいいのにと密かに願っていたけど、その手は余裕げに生地の上から胸に触れた。
前に答えなかったそのサイズを測っているのかもしれない。……手、おおきい。男の手だった。
骨張った指はフロントフックだけ外し緩めてから布だけをずり下ろして胸の全容を確認した。あきらめて、なんて、都合の良い望みだったね。
夏なのに空気が冷たい。雨が降ったからだろう。敏感に姿を現した左のほうを、涙のときと同じような感じで舐められる。
意思と反して身体がびくりと揺らぐ。その様子にうれしそうに笑った。
今度は舌で上下左右に転がされたり押されたりする。
そのうち歯を当てられ軽く咬まれたと同時に反対の突起を親指の腹がぐりぐりと弄り出し、ついにうわずった声が漏れてしまう。
不本意で悔しくてすぐに口元を手で覆えば、その行動を咎めるようにくちびるが寄せられた。