きみはわたしの地獄


それでも首を横に振れば片手を取られ、爪から指の付け根まで、ひとさし指、小指、中指…と甘く咬まれたり引っ張られたりする。つぎは何の指がそうされるんだろう。


「いくら整形しても、身体を造り変えても、爪とか髪質とか声は同じにできないんだ。だからこそ、どんな瞬間の声も聴かせて。知りたい」


おねだりするみたいな言いかたをされ、思わず口元を押さえていた利き手のちからが緩む。

満足げな笑みを浮かべながら両腕ともシーツに縫い付けられた。


「つぎ邪魔したら縛るよ。いやでしょ?」

「……」

「それともそっちのほうが好み?」

「ちが…っ」

「じゃあもうしないでね」

「…ぅ、ふ、…………ッ」


喋りながらもう一度口に含まれ、音を立てて強く吸われる。

手首から後頭部にするっと手が回り、髪を巻き込みながらゆるい力でわし掴みされる。完全に固定された状態で身動きを封じられ、もう何も考えられなくなった。


何も、考えたくない。

ぎゅっと目をつぶれば、出来上がったであろう皺に舌が這う。


そのくちびるや指先は時間をかけてゆっくりと、まるで間違い探しのようにわたしの全てを暴いていった。

何かが伝う太腿の裏に手を入れ、ぐっと持ち上げながら容赦なく奥を突かれる。


「まって、」

「やだ、待たない」

「ッ、だめ、……」



それはまるでちがうところを見つけるような長い時間だった。


「しろちゃんが世界で一番だよ」


それは何な一番なんだろう。
疑問に思うのに、世界で一番優しく聴こえた。


ちがうところは、たぶん、たくさんあった。性別も違うし、考えかたも違う。かたちも、形も、容も、貌も、違う。同じところと同じくらいあったんじゃないかな。

それを知る作業のような行為。

昴くんがそれをどう思ったかはわからない。


だけど、わたしは。


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