【完結】悪魔な御曹司に心も身体も溶かされました。
◎彼との取引
◇ ◇ ◇
「お疲れ様です。遠藤、戻りました」
「あ、遠藤さん、お帰り! どうだった?聖川社長〜」
「えっ」
その名を口にされて、思わずドキッとしてしまう。だってわたしは、さっき彼の身体に抱かれたばかりなのだから……。
その彼の体温や余韻はまだ残っていて、鮮明に彼との情事の記憶が頭の中に蘇っていく。甘く切なく、だけど気持ちいいくらいに彼の身体に記憶を焼き付けられている。
「……遠藤さん? どうかした?」
「えっ!? あ、いえ……。なんでもありません」
イケない。イケない。彼のことばかり考えていてはダメだ。 わたしは今彼の会社に営業しに行っているのだ。彼の身体に抱かれに行っている訳ではない。しっかりしなければ……。
「聖川社長、話聞いてくれた?」
「あ、はい。……少しだけ。話だけ聞いて、また追い返されました」
聖川社長に、社長室で抱かれたなんて言えないわたしは、咄嗟に嘘を付いた。
「そう……。大丈夫?」
「まぁ……。平気なような、平気じゃないような」