【完結】悪魔な御曹司に心も身体も溶かされました。



 気が付いたらわたしの瞳からは、涙がこぼれていた。知らぬ間に出た涙だ。

「莉沙さん?……大丈夫?」

「す、すいません……。何でもありません」

 こうやって心配してくれる人がいるって……。すごく素敵なことなんだなって思った。

「莉沙さん、何かあったの?」

「いえ……。何でもありません」

 恥ずかしい。こんな所で泣くなんて……。全然、そんなつもりないのに。

「莉沙さん、辛いことや悩みがあれば、何でも言ってくれて構わないからね?」

 とお父様は、優しく微笑みながら話してくれた。

「はい。……ありがとうございます」

 家族って、いいな……。こんなに素敵な家族を目の前で見たら、自分も家族が欲しくなった。母親のことも、父親のこともまるで知らないけど。それでも、一人の人間としてこの世に生まれてきたことに感謝するしかない。

 わたしもいつか、自分の家族がほしいな……。大好きな人と、死ぬまでずっと隣で笑っていたい。そう思ってしまった。
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