風になびく君の髪






北谷くんから言われた一言に私は困惑する


「僕は中学の頃に戸塚さんを見て一目惚れしたんだ
でも、あの頃の戸塚さんは少し悲しそうで
どこか遠くにいるような人だった
だから今、こうして戸塚さんと仲良くなれて
あの時みたいに悲しそうな戸塚さんになって欲しくないから僕はここにいる
そう思っててもいい?」


北谷くんの真剣な眼差しが言葉をずっしりと重くさせていた


……でも


「……その気持ちは嬉しいよ
……けど、私好きな人が居るから」


私がそう言うと北谷くんは表情を変えた


「光井君のこと?」


「……うん」


私は素直に答える


「…………そうだよね」


北谷くんは沈み込むように肩を落とした


私も多分自分で気づいてる


北谷くんが悪いわけじゃない


私がふーまにばっか頼ってたから


北谷くんとお買い物行った時も


ずっとどこかでふーまと重ねていた


今でも悲しくて泣いちゃった私をふーまが慰めて欲しい



北谷くんは目を俯いている


北谷くんの気持ちは伝わったよ


でもやっぱり違う


私の好きな人はふーまだし


それが変わることはないから


「北谷くん、気持ちはすごくありがたいんだけど
やっぱ北谷くんは友達だよ
出来たらでいいんだけどまたみんなと一緒にどこかに行く時は一緒に居てくれない?」


私がそう言うと北谷くんは落ち込んでいた顔を上げる


「………うん、そうしよう」



「ありがとー!」


他の人だったらどう思うんだろ?


好きだけど振られた人と友達になるって


北谷くんには悪いけど


私はやっぱりふーまに会いたい






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