風になびく君の髪

「よう、水瀬、そろそろ時間だぞ」


俺が後ろから水瀬に声をかける


水瀬は体をビクッとさせて振り返る


「……光井君……」


水瀬は涙を流していた


「……どしたんだ？」


理由はわかってる


俺が原因だってこと


「……なんでもない」


水瀬は何も話さない


「もうすぐで劇の時間になるぞ
そろそろ行こう」


「……無理」


「………」


「あの劇は幼なじみの設定で
最終的には心が結ばれる物語だよ？
ひまわりさんと光井君みたいに」


水瀬の言葉は俺の心を曇らせる


「でも、湯山と一緒に頑張ってきたじゃん
俺と水瀬じゃないとだめなんだよ」


「………」


納得していない様子の水瀬


これは俺も言うことを言わないとだめだ


これを言わなかったのは俺も逃げているのと一緒だから


「俺……中学の頃、水瀬と初めて会った時
……俺は水瀬のこと一目惚れしたんだよ」


「……え？」


水瀬は目を見開いて驚いている様子


「確かに好きだった……けど
俺は昔から一緒に居たひまわりの存在が当たり前だと思ってて
それを失うのが怖くなっていったんだ
もちろん水瀬が好きだと思ってたよ
でも…どっちを守りたいかはやっぱひまわりだったんだ」



「………そんなことなんで今言うの？」


「ひまわりは多分、人の心がどう思ってるとかを色々気付くんだよ
もちろん俺が水瀬のことが好きだったことも気づいてる
それを知ってもひまわりは水瀬を見捨てようなんて思ってないんだ
今でも大事な友達だと思ってるんだよ
だから水瀬も俺とひまわりをどうか見捨てないで欲しいんだ」


俺の思いは



「………うん」


水瀬に届いた


「体育館に行こう
みんなもう準備出来てる」


俺は水瀬の手を掴み体育館に連れて行く


俺はひまわりが好きだと思っていても


その柔らかい手とサラサラな肌は今でも意識してしまう



でも……これでもう終わりだ