最低で最高のホワイトデーを
傷がどんどん抉られて、苦しくなって泣いてしまう。すると、さっきよりも強い力で涼ちゃんは抱き締めてくれた。

「いつも希は好きになった人に泣かされる。俺なら絶対泣かせないのに!」

驚いて顔を上げると、真剣でそれでも頬を赤く染めた涼ちゃんの顔があった。その表情やしっかりと鍛えられた体にドキッとしてしまう。そっか、涼ちゃんも男の人だったね……。

「俺、希が幸せになってくれるならっていつも気持ちを隠してた。でも、こんなにも傷付けられてしまうくらいなら、俺が希のことを奪うから!」

「涼、ちゃん……」

心が震えていく。私、誰にドキドキしてるんだろう。こんなの勝理くんに対する裏切りだって思う気持ちと、涼ちゃんと一緒の方が落ち着くっていう気持ちが現れてる。どうしたらいいんだろう。

「あのさ、希。本当はこんなこと言いたくはないんだけど……」

迷っている私に、涼ちゃんは自分のスマホを取り出して画面を見せた。
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