最低で最高のホワイトデーを

ヘラヘラと笑いながら勝理くんは言う。いつもの私なら、「しょうがないね」って笑っていたのかもしれない。どうして私、ろくでもない男とばかりしか付き合えなかったんだろう。

「あっ、今日ってホワイトデーだよな？ちゃんとお返しは買ってやったから感謝しろよ」

勝理くんはそう言い、かばんの中から少し潰れた袋を取り出す。その袋の中身はラッピングもされていないマシュマロの駄菓子だった。ホワイトデーのお返しとはいえ、ひどすぎる。

「希って貧乏くさいものがいいんだろ？金欠だったからマジでラッキーだわ」

そう言った後、勝理くんはさっさとデート行くぞと言わんばかりに無言で手を差し出す。いつもなら迷わずその手を取っていた。でも、私は彼を睨み付けて言う。

「金欠なのは、他の女の子にホワイトデーのお返しとしてシャネルの香水やケイト・スペードのバッグを買ってるからでしょ！？」

私がそう言うと、勝理くんは「はあ！？何、デタラメ言ってんだよ！」と否定する。でもその目は泳いでいて、本当のことなんだとわかった。

「私、全部知ってるんだから！勝理くんが何人もの人と付き合ってることも、毎日のように遊び回っていることも、私の体のことを面倒くさいって思ってることも、全部知ってる！」