最低で最高のホワイトデーを
「嫌がってるだろ。その手を離せよ」

勝理くんの手を掴み、涼ちゃんが私と勝理くんの間に立つ。その後ろ姿はとてもたくましい。

「希を大切にできない奴に誰が渡すかよ。希の旦那の席まで予約済みだ!」

勝理くんの腕が離されていく。自由になった私の手を、今度は涼ちゃんが取った。まるで割れ物を扱うような優しい手で……。

「行こう」

「うん!」

そのまま勝理くんのことは放っておき、二人で手をつないだまま走る。あの人と別れられてよかった。家に帰ったら連絡先を消しておかないとね。

そうホッとしつつ、私は涼ちゃんを見上げる。彼のさっき言ってた言葉って……。

いや、まだ肝心の想いを伝えることを私はしていないし、涼ちゃんだってあの場所で言うつもりはなかったと思う。だから、聞かなかったことにした方がいいかな。

そう考え、私は何も言わずに涼ちゃんとつながっている手に少し力を入れた。



「ハアッ……ハアッ……」

「ハアッ……ハアッ……」

荒い呼吸が重なる。ずっと走り続けていたため、もう足が棒のようだ。こんなにも走るのは久々で、でも気持ちいい。
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