最低で最高のホワイトデーを



勝理くんとの出会いを考えていると、ハッと我に帰る。今日は三週間ぶりの勝理くんとのデートの日だ。誘っても彼が「忙しいから」という理由で、今日まで行けなかったんだよね。

「映画のペアチケット、私が持ってるから遅れるわけにはいかないんだった!」

時計を見ると、スタジオを出なければいけない時間はとっくに過ぎている。私は慌ててかばんを掴んで外に飛び出した。温かくなってきたとはいえ、夕方になると少し肌寒い。

駅まで全走力で走り、なんとか電車に間に合った。十五分ほど電車に揺られて待ち合わせ場所へと向かう。待ち合わせ場所は駅前にある時計の下。幸いにも、勝理くんはまだ来ていない。

「早く来ないかな〜……」

相手を待つこのドキドキする気持ちが幸せだ。前、勝理くんがデートに誘ってくれた時には私は生理中で残念ながら動けなかった。だからこそ、今日は思い切り楽しみたい。

しかし十五分、二十分と待っても勝理くんはなかなか来ない。早く来ないと映画が始まっちゃう……。私はスマホを取り出し、電話をかけることにした。
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