帝王と私
「じゃあ、ここで」
「うん、ありがとう。会社まで送ってくれて……。
それに服まで……」
一度帰って着替えてから、会社に行こうと思っていたが、彼が用意してくれたのだ。
かなり断ったが、
「受け取ってくれないと、これは他に誰が着るの?」
と言われ、しぶしぶ受け取ったのだ。

「運転手さんも、ありがとうございました!」
「いえ」
「弥生は律儀だね?」
「え?そうかな?」
「弥生のすることひとつひとつに、心が奪われる。
これ以上、心持ってかないでよ!」
「そんな////」
そして、チュッと軽く私の口唇にキスして、
「じゃあまたね!
いつでも連絡ちょうだいね!
弥生ならいつでも大歓迎だから」
と言い、去っていった。

とはいえ、この私が連絡できるわけない。
ここまで心を持っていかれて、嫌われた時のことを考えると、苦しみで心臓が潰れそうだ。
彼を困らせたくない。
嫌われたくない。
その気持ちが強く、連絡できずにいた。
そのまま二週間たった━━━━━━━

「弥生は、なんなの?」
「え?なんなのって?」
「会いたくてたまらないんじゃないの?帝王に」
「え?そりゃあ…」
「電話位、すればいいじゃん!」
「うん、そうだよね?でも忙しいかもしれないでしょ?」
「はぁー。スマホ!」
「え?」
「貸して?スマホ」
「うん…」
栞奈はスマホを操作して、
「はい」
と渡された。
「え…?」
「会いたいって言いな!」
「えぇー」
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