帝王と私
顔を上げると、綺麗なでも少しミステリアスな、彼の優しい笑顔があった。
「ねぇ“うん”以外の弥生の声が聞きたいな」
「え?」
と言われても、ワガママを言ってしまいそうで怖い。

「フフ…可愛い……
俺達のホテル行こうか?」
頭をポンポンと撫でた彼。
そのまま私の手を握り、歩き出した。

「社長。どうぞ」
「弥生、どうぞ?」
彼は握っていた手をそのまま誘導して、私を車内に促した。
そして、横に座った彼は再び私の手を握る。
その手を口元に持っていくと、キスをした。

私はいつものこの瞬間が好きだ。
今からは彼は私のモノ。
私だけが独占できる。
なんとも言えない気持ちで、彼を見つめていた。

「弥生?どうした?」
「え?」
「泣いてる…」
そう、彼といると苦しくなって涙が出るのだ。
幸せすぎて…………。

「嬉しくて……。
貴将さんといれること、奇跡みたいで。
凄く幸せ」
「参ったな……」
「あ、ごめんなさい…。
困らせるつもりはないの。
嫌いにならないで?」
「違うよ!困ったんじゃないし、嫌いになるなんてあり得ない。
ただ、そんな可愛いこと言われたら、我慢できなくなる」

そう言うと、口唇を奪われた。
「ンン……ダメ…ここ、車の……」
「黙って……俺だけに、集中して…?」
「ンンン……ふぁ…」
夢中で、口唇から彼の愛を受けとめた。
< 2 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop