帝王と私
パーティーも終盤にさしかかった頃。


ガッシャーン!!!

「キャッ!
ちょっと!!何ー!」
「す、すみません!!」
「どうしてくれんのよ!このドレス高かったのよ!!」
「申し訳ありません!
クリーニング代は払いますので!」
「当たり前よ!!
もう!最悪ぅ~」

ボーイさんとうちの社員がぶつかったようで、トラブルになっていた。
よく見ると、ボーイさんの手が怪我している。
割れたガラスで手を切ったのだろう。
「ちょっと、弥生?」

「これ、使ってください!」
「え?」
「手…怪我されてますよね?とりあえずおさえないと……。
私も片付け手伝いますので」
私はそのボーイさんの元に向かい、ハンカチを渡した。
「はい…ありがとう……」
フワッと笑った、ボーイさん。

「え…?」
「何か?」
「いや、なんとなく…帝王さんに似てて……。
ごめんなさい…そんな訳ないのに……」
「いえ…」

「ありがとうございました。ハンカチもきちんと、お返しします!」
「いえ、捨ててもらって構わないので……。
じゃあ私は…!」
「じゃあ、名前教えて下さい!」
「一輝 弥生です」
「弥生……」
「え?あの……」
「いえ、では。
本当にありがとうございました」

彼は去っていった。
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