帝王と私
狂愛
「貴将さん…?どうして?」
手首から血が滲む……。
「今日……一緒にいた、男は誰…?」
「え?」
噛み痕から出る血を舐めとる、彼。
その妖しい表情に、寒気がした。

「愛することと、憎むことって表裏一体だよね……。
俺の知らないとこで、俺以外の相手……しかも男にあの表情するなんて、赦されないよ…?」
「え…あの…あれは、仕事で……」

身体が震える。
恐ろしかった。
私の手首を持つ力強い手、噛みついた歯の強さ、噛み痕から出る血を舐めとる表情。
全てが━━━━━━

「今日は、ずっとお仕置きの時間だ………」

ホテルに着いてエレベーターに乗った途端、口唇を貪られ、立てなくなる程翻弄された。
そのまま抱きかかえられ、部屋へ。
ベットに下ろされる。

「どんなお仕置きにしようかなぁ?
身体中、キスマークつけようか?隠せなくなる位のキスマーク……。
そうすれば、誰も弥生に寄り付かないよね?」
「ほんとに仕事に行ってただけなの……」
「俺が怒ってるのは、表情のことだよ?あれは、俺だけの……俺だけが見ることのできる弥生の表情なんだよ?」
「え?表情…?」

「会社前で、男と見つめあってたでしょ?」
「あ、あれは!貴将さんに………」
「俺?」
「村井さん……一緒にいた方が、貴将さんに見えたから……つい………」
「は?」
「私の髪の毛についていた、花びら取ってくれた時の優しい表情が、貴将さんに似てたの。だから顔が緩んじゃって……」
< 42 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop