帝王と私
そんなある日━━━━━━━━

「弥生?」
「え?晋平くん?」
嘘………なんで?
一番会いたくない人が、そこにいた。

「久しぶりだな?」
「うん…」
「少し…太った?」
相変わらず、失礼な人だ。

「私…行くね」
「もう一回、やり直さない?」
「は?」
「やっぱり弥生が一番━━━━」
「都合がいい?」
「は?」
「そうだよね?私…晋平くんの為に必死にダイエットしたり、必死に働いたり、一度も口答えしたことないもんね」
「別にそうゆうつもりは……」
「悪いけど、私…恋人いるの………だから、無理!」
「ちょっと待ってよ!」
手を掴まれる。

「もうすぐ、恋人が迎えに来るの。こんなとこ見られたくないから、離して!」
必死に振り払うが、しっかり掴まれていて振り払えない。

この人は、ガリガリな女性がタイプで私に事あるごとに“痩せろ”と言っていた。
私を抱くときも、私の気持ちなんか全く考えず、まるで精力処理の道具のように扱っていた。

だから、貴将さんに“太っても構わない”と言われたこと、私だけは何をしても許されると言われたことがどれ程嬉しかったか……
「とにかく!離して!」


「何をしてるの?」

「え?
貴将さん…」
「手……離せよ………。
弥生が穢れる」

彼の雰囲気が、どす黒く重たくなっていく。
ここの空間だけ、物凄く重力がかかったように。
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