隣の部屋の新人くん
ことの始まり
二月末。
新宿の夜景が足元に輝く高層タワーのバー。
窓際の席に佳弥(よしや)と並ぶ。

もうすぐ付き合って三年。
順調な交際。

私が白ワインを半分くらい飲んだところだった。

「テルアビブに行くことになった」

佳弥からの突然の報告。

「て・・・?」
「テルアビブ」

佳弥が穏やかな笑みを浮かべながら言う。

てるあびぶ・・・

私の頭の中を地球儀がグルグル回る。

「イスラエルの都市だよ」

私の思考停止した顔で察したのか、佳弥がすぐに言う。

「もともと開発部の先輩たちも続けて行ってるし、異動の可能性は高かったんだ」

佳弥の飲んだハイボールのグラスが、カランと氷の音をたてる。
ドリンクのメニューを手に取りながら、もう片方の手でワイシャツのボタンを外した。
慣れた仕草。
なんてことはないよ、というような涼しい表情。

この佳弥の余裕のある感じがずっと、初めて会った時から好きだった。
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