隣の部屋の新人くん
ランチをした後は、買い物したり、公園を散策したりする。

「中華街ってここから遠いんですか」

夕方になって突然そんなことを言う坂口くん。

「え、中華街も行きたかったの?」
「横浜って言ったら中華街じゃないんですか」

なんとなく、ここらへんで適当に時間を潰して夕ご飯食べて帰る予定だった。

戸惑っているうちに、坂口くんが強く私の手を引く。

「行きたい、俺、中華街」
「ええ、今から?」
「うん」

渋る私をよそに、ズンズン手を引いて歩いて行く。

もっと早く言ってよ、と思いながらも、どこかバタバタなスケジュールに楽しみを感じる。

夕方からの中華街。

数時間だけ見て、また戻る予定。

赤くて、こちゃこちゃ賑やかで、美味しくて、坂口くんが変なものを見つけては笑う。

デートってこんなに楽しいんだ、と思った。
まるで初恋みたいな感覚。

あっという間に時間が過ぎて行く。

急ぎ足で見て回って、18時から坂口くんが予約しててくれた店に急いだ。

ずっと私も笑い続けてたことに気付く。
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