隣の部屋の新人くん
20分くらい並んで、やっと私たちの番になる。

係員のお兄さんに急かされるように、止まらないゴンドラに急いで乗り込んだ。
ドアがガチャンと大きな音を立てて閉められると、ゴンドラはゆっくり揺れながら高度を上げ始めた。

閉められた空間に、二人。

「高所恐怖症だったりする?」

私は坂口くんの顔を見る。

「結構平気です」
「へー意外」

なんとなく、頭がコツンと当たりそうで、当たらない距離。

静かな時間が流れる。

「ねえねえ、だんだん私怖くなってきたんだけど」
「怖いんですか」

坂口くんが笑う。

「このハコが落ちるとでも思ってるんですか」
「そう、ゴロンゴロンって」

そう落ちたら、真っ逆さまだ。

足元に広がる夜の横浜。
まだまだたくさんの人たちが歩いている。

それから何かを深く考えるわけでもなく、ただ外の景色にずっと目を向けていた。

無言の時間が、ゆっくりと流れる。
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