隣の部屋の新人くん
一週間
月曜日。

週始めから、誰もいないフロアに自分一人残って残業していた。
来年入社予定の採用活動が始まって、説明会のスケジュールを組む。

社員のスケジュールとの睨み合い。

営業の人達は外に出てることが多いし、スケジュールが合ってお願いしても面倒がられることも多い。

一覧表を作っていた時、ドアがバタンと閉まる音がした。
目を向ける。

「まだ残ってたんですか」

坂口くんだ。

「うん、来週の説明会でさ、前からお願いしてたのに出張入ったから無理って、さっき帰る時言われて」

冷静さを装って答える。
坂口くんが隣の席に座った。

「何しに来たの」

そう言うと、ピラッとA4一枚の紙を見せる。

「新入社員の抱負。人事部長に明日まで提出なのすっかり忘れてて、今まで書いてた」
「ああ、部長の箱に入れておいたらいいよ」

坂口くんは「ありがとうございます」と言って、部長の席にある箱にストンと入れた。
私はまたパソコンの画面に目を向ける。

「大変そうですね」

坂口くんがまた隣の椅子に戻ってきた。
背もたれに寄っかかる。

「今はまだいいけど、選考進んでいくとドタキャンとか内定辞退とか毎日ボロボロ出てきてさ、嫌になるよ」

そこまで言ってハッとする。

「ごめん、この間まで就活生だった人に愚痴って」
「べつに、いいですけど、一年前思い出してました」

坂口くんの顔を見る。
< 34 / 55 >

この作品をシェア

pagetop