隣の部屋の新人くん
掲示
月曜日。
8時15分。

職場に着いて、パソコンを立ち上げる。
立ち上げてる間に、ペンやバッグを整える。

一口お茶を飲む。

結局、金曜の夜から、昨日の夜までずっと坂口くんと一緒にいた。

恋の始まりってこんなに楽しいんだ、と気付く。

恋の始まりというより、坂口くんとの日々が楽しいんだ、きっと。

そんなことを考えている間にパソコンが立ち上がる。

いつも通り最初に社内掲示板を開くと、一番上の最新情報が目に飛び込んできた。

「若手社員長期海外研修の配属について」

社員の研修関係は採用の私には関係ないと思いつつ、とりあえず開いてチェックする。

「7月1日付での若手社員長期海外研修の配属について下記の通り通知いたします・・・」

少し嫌な予感がした。
「記」の下に目を通す。

営業部。
そのあと1スペース空いて、続く文字。

嫌でもすぐに目に飛び込んできた三文字。

「坂口諒」。

状況を飲み込めないまま、横に視線をスライドさせる。

「シンガポール支部」

シンガポール。
目の前が真っ黒になる。

隣の矢島さんに小声で話しかける。

「これって希望者ですよね？」

矢島さんは「ああ」と答えた。

「そうだよ、三年目までの希望者」

坂口くんは、海外を希望していた。
期間は三年。

坂口くんからスマホにメールが届いた。

「今日の夜、部屋行っていい？」

多分このことだ。

私は「いいよ」と返した。

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