隣の部屋の新人くん
一昨年分のファイルをダンボールに詰めて、台車で書庫まで運ぶ。

こういう脳みそを使わない体力仕事の時は、どうしても余計なことを考えてしまう。

なんで。
なんでなんだろう。

長い廊下。

遠く反対側のドアが開く。

なんで、こういう時に会ってしまうんだろう。

間に長い距離があるのに、目が合った。

向こうはすぐに斜め下に視線を落として、ゆっくり向かってくる。

手には1つのダンボール。

長い廊下の中央。
お互い書庫の前で立ち止まる。

私がカードキーを当てると、ガチャッと鍵の開く音がした。

私は台車の位置を少しずらして、ドアを開ける。

坂口くんがダンボールを床に置いて、ドアを押さえててくれる。

「ありがとう」

私は先に台車ごと入って中の電気を付ける。

今度私がドアを押さえてると、坂口くんがダンボールを持って入ってきた。
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