テスター
それが、たかがメークひとつでここまで崩壊するなんて……。


母親が言っていた通り、メークなんてする必要はなかったんだ。


私は私のままでいれば、それで幸せな人生を送ることができた。


見合い結婚だろうがなんだろうが、普通の家庭を築くことができるならそれでよかったんだ。


そう思っても、もう遅い。


メークをやめて出勤した日、教室内がざわめいた。


同時に「振られたんだ」と、声が聞こえて笑われた。


そうじゃないと説明しても、もう生徒たちが聞いてくれないことはわかっていた。


メークをやめても一度崩壊してしまった教室を立て直すのは安易じゃない。


生徒たちは今度は「ブス」とか「ババァ」という幼稚な言葉を投げかけてくるようになった。


それは教師たちの間でも知れ渡ることになり、職員会議にまで持ち出されてしまった。


「生徒にバカにされているようじゃ、この先やっていけませんよ。しっかりしてください」


それが、最終的な判断だった。


つまり、自分でなんとかしろということだ。


その結果を聞いて女性教師たちが含み笑いを浮かべていることに気がついた。
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