テスター
☆☆☆

「久典、おはよう」


翌日、教室に入るとすでに久典が登校してきていたのであたしは声をかけた。


「あぁ。おはよう」


「今日はいつもより早いんだね。校門で会わなかったじゃん」


「ちょっと用事があってさ」


そう言って久典は視線を外した。


疑問に感じて首をかしげていると、「久典君、おまたせ!」と言う声が聞こえてきて振り向いた。


その先にいたのはこちらへ走ってくる飯田さんの姿があった。


飯田さんは胸まである髪の毛をポニーテールに束ねている。


それがまた似合っていて、とても眩しく見えた。


「いや、大丈夫だよ」


「久典、なにか予定があるの?」


「今日も学校案内を頼まれてるんだ。それで、少し早く来た」


そう言う久典はあたしと視線を合わせようとしない。


その不振な動きにあたしは久典と飯田さんを交互に見つめた。


「それなら、あたしも一緒に行くよ」


警戒心をあらわにして言うと、飯田さんが小首をかしげてあたしを見つめる。
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