テスター
「えっと……」


「あたし、小川千紗。久典の彼女だから」


思いっきり牽制するつもりで言うと、飯田さんは一瞬目を見開き、それから口元に笑みを浮かべた。


「小川さん。よろしくね」


そう言って手を差し出してくる。


その態度にこちらがたじろいでしまった。


あたしが牽制していることに気がついていないんだろうか。


疑問を感じながら手を握る。


その瞬間痛いくらいに強く握り返された。


驚いて飯田さんを見るが、さっきまでと変わらず笑顔を浮かべている。


この子……。


嫌な予感が胸に渦巻く。


このタイプの子は好きになった男にとことん迫っていくタイプだ。


しかも、周りの生徒たちに気がつかれないよう、最新の注意を払いつつ。


ようやく手が離されて、あたしはその手をさすった。


少し赤くなってしまった。


「小川さんってその……特徴的な顔をしてるね」


飯田さんが笑いをかみ殺すように言った。


え……?
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