テスター
あたしはすぐに自分の解答用紙を机の引き出しに隠したけれど、遅かった。


「今ちょっとだけ見えちゃったんだけど、千紗の点数30点て本当!?」


「ちょっと郁乃!」


「あ、ごめん。つい言っちゃった」


その顔はあたしを見下して笑っている。


「でもさぁ、いくら可愛くても頭がそれじゃ久典君もかわいそうだよねぇ」


久典の名前を出されてハッとする。


久典は見た目だけじゃなく、勉強もできる。


それなのに彼女の成績が平均点以下だなんて、郁乃の言うとおり嫌かもしれない。


不安になって久典へ視線を向けると、ちょうどこちらへ向けて歩いてくるところだった。


「千紗、大丈夫か?」


「う、うん」


さすがに今回はあまり大丈夫ではなかったが、なんとかうなづいた。


すると久典は郁乃へ向き直った。


「あまり千紗をイジメないでくれ。人には得意不得意があるんだから」


「うっ……」


久典に面と向かって言われた郁乃はたじどいだ後、逃げて行ってしまった。


「ありがとう久典」


「当然のことをしただけだよ。勉強ができなくても俺の気持ちは変わらないから安心して」
< 17 / 150 >

この作品をシェア

pagetop