テスター
「ちょっと、あたしたちもいるんだけど?」


智恵理が不満そうに頬を膨らませて久典を見る。


「あぁ、ごめん。おはよう2人とも」


久典は今やっと2人の存在に気がついたように挨拶をする。


2人とも不服そうなままおはよう、と返事をした。


それだけであたしの鼻は高くなる。


他にどんな女の子がいてもあたしだけを見てくれている気分になるからだ。


「やっぱりあの2人ってお似合いだよねぇ」


クラス内からそんな声が聞こえて振り向くと、女子生徒たち数人があたしと久典を見ているのがわかった。


クラスでも、クラス外でも、あたしたちは憧れのカップルなんだ。


みんな、あたしと久典を遠巻きに見ては羨ましそうな声を上げる。


それがあたしの日常の一コマになっていた。


優越感で笑みがこぼれる。


彼氏はカッコイイし、友人は2人とも美少女。


みんなには到底まねできないことだ。


それだけで自分の価値がみんなより高いとよくわかる。


「あたしも彼氏作ろうかなぁ」


どれだけモテても彼氏を作ろうとしない智恵理が呟く。


「智恵理のおめがねに叶う人なんてこの学校にはいないよ。せいぜい遊びの関係止まりだね」


栞がそう言って笑う。
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