テスター
その圧倒的な雰囲気にあたしたちは無言になってしまう。


テスターはまるで品定めをするようにあたしたち3人の顔を順番に見ていった。


目が合うと殺される。


そう感じて咄嗟に視線をそらせた。


テスターは智恵理の前で視線を止めるのがわかった。


智恵理の体がビクリとはねる。


「とても綺麗な肌ね」


智恵理の頬に触れ、うっとりと呟く。


「そ、そんなことない……。郁乃の方が綺麗だから!」


智恵理が涙目で叫ぶ。


「郁乃の方が綺麗、郁乃の方が綺麗、郁乃の方が綺麗」


また、壊れた機械のように同じ言葉を繰り返す。


気味が悪くて耳を塞いでしまいたいが、それもできない状況なので必死に耐える。


テスターは一旦後ろを向いたが、すぐにナイフを取り出して智恵理に向き直っていた。


「じょ、冗談だよね?」


智恵理が無理やり笑顔を浮かべて質問している。


テスターはあのナイフで智恵理の肌を切り取るつもりでいるのだ。


テスターは智恵理からの質問には答えず、ナイフを智恵理の顎下に押し当てた。


「……っ!」


智恵理の声が恐怖でかき消される。


ブツンッと音がしたかと思うと、ナイフの先端が智恵理の顎下に突き刺さっていた。


「いっ……!」


智恵理が声にならない悲鳴を上げている。
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