テスター
「ふふふっ。綺麗な肌」


テスターは満足そうな声色でそう言うと後ろを向き、顔の包帯を解き始めた。


「智恵理、智恵理しっかりして!」


隣から声をかけても智恵理は少しも返事をしない。


顔中から血が流れ出し、それは床に水溜りを作っていっている。


「まさか、死んだんじゃ……」


栞が青い顔をして呟いた。


やだ。


そんなのダメだよ。


どうして智恵理が死ななきゃいけないの?


どれだけ声をかけても智恵理は目を開けない。


腹部を注視してみても、そこが上下に動いているようには見えなかった。


本当に、死んじゃったの……?


愕然として頭の中が真っ白になったとき、テスターが振り向いた。


顔には智恵理の皮膚がしっかりと縫いつけられている。


そしてまぶたはあたしのものだ。


つぎはぎだらけの顔に吐き気がこみ上げてくる。


こんなんじゃ綺麗とはほど遠い。


まるで化け物だ。
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