テスター
「智恵理が返事をしないの! 死んだかもしれない!」


必死になって訴えかけると、テスターがこちらを向いて首をかしげた。


「だから?」


「だからって……」


それ以上はなにも言えなかった。


テスターにとって一番大切なのは美しくあること。


そのためにはなんだってする。


人が死んだって、そんなことはどうでもいいのだ。


この人には何を言っても効果がないんだ……。


「い、郁乃なんだよね? もうやめようよ! どんどん汚い顔になっていくじゃん!」


叫んだのは栞だった。


「汚い?」


「そうだよ! 鏡見たんでしょう? あんたの顔、今すっごく汚いから!」


泣き叫ぶ栞にテスターの顔色が変わったのがわかった。


仮面の下で怒りに震えている。


「栞やめて、それはダメ!」


慌ててとめるが、もう遅かった。


テスターは栞の前に立ち、その顔をまじまじと見つめている。
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