テスター
「綺麗な鼻ね」


「え……」


栞が疑問符を浮かべる暇だってなかった。


テスターは剪定ばさみを取り出すと、少しも躊躇することなく栞の鼻を切り落としてしまったのだ。


「イヤアアアア!」


あたしと栞の悲鳴が折り重なる。


一瞬にして切り取られた鼻を手に取り、テスターは裁縫道具を取り出る。


「栞、栞!」


必死に話かけるが栞は反応しない。


目を大きく見開き、鼻があった場所からはボトボトと血を流し、そこには空洞が広がっているばかりだ。


「栞しっかりして!!」


悲鳴を上げるように声をかけた次の瞬間、栞の目がギョルンッと動き、白目をむいた。


そのまま首が垂れ下がり、動かなくなる。


嘘でしょ……。


「智恵理、栞、目を覚まして……」


自分の声がなさけないほどに震えていた。


2人とも少しも反応を見せてくれない。


「ねぇ、2人とも!!」


大きな声を出しても無駄だった。


ただテスターが鼻歌交じりに栞の鼻を自分の鼻の上に縫い付けているばかり。


次はあたしの番だ……。


次はあたしが殺される!!
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