テスター
☆☆☆

結局、なんの収穫もないまま夜になって家まで送ってもらっていた。


「お役に立てずにすみません」


車を降りて深くお辞儀をする。


千紗の父親は「そんなことはないよ、ありがとう」と言って車を走らせて行ってしまった。


きっと、これからまた千紗を探しに行くんだろう。


俺はスマホを取り出して千紗からの連絡がないか確認をした。


画面を見て肩を落とす。


やっぱり、返事はない……。


みんなが言っているようにただ遊びに出ただけなら、連絡くらいくれてもいいのに。


そう思い、少しだけ涙が滲んできたことに気がついた。


こんなことでなくなんてみっともない。


別に千紗が死んだわけじゃないのに。


そこまで考えて、ハッと息を飲んだ。


もしかして……と、嫌な予感が胸をよぎる。


が、強く左右に首を振ってその考えをかき消した。


そんなことありえない。


千紗が死ぬなんてこと!


「明日には、絶対に見つけ出す」


俺はそう心に決めたのだった。
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