テスター
☆☆☆

この日、俺は思いのほかしっかりと眠ることができた。


前日に眠りが浅かったせいもあるだろう。


夢の中に千紗が出てきて、俺はかけよった。


「千紗、どこにいたんだよ!」


「ごめんね久典。ちょっと、トラブルに巻き込まれちゃって」


夢の中の千紗は体を震わせていた。


「寒いのか?」


そう言って手を握り締めると、その手は氷のようにつめたい。


「どうしてこんなに冷たいんだ? トラブルってなんだよ?」


質問しても、千紗は無言で左右に首をふるだけだ。


その表情はとても悲しそうに見えて、胸が締め付けられる。


「今どこにいる? みんなすごく心配してるんだぞ?」


「そっか……、心配かけてごめんね。でもあたしはまだ大丈夫だから」


「まだ大丈夫ってどういう意味だよ? 智恵理と栞は一緒にいるのか?」


質問している間に、気がつけば握り締めていた手が離されていた。


咄嗟に握りなおそうとしたけれど、手を伸ばしても届かない。


千紗の体がどんどん遠く離れていく。


「千紗!」


名前を呼んで駆け出した。


走っているのに追いつくことができなくて、千紗はどんどん遠ざかる。


「千紗、行くな!!」


「ごめんね久典」


千紗が泣き声でそう言った次の瞬間、俺はベッドの上に飛び起きていた。
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